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国華
  
 『国華』は1889年(明治22年)10月に日本の優れた美術品を広く知らしめる為、岡倉天心、高橋健三、フェノロサらにより創刊された美術雑誌である。現存する美術誌としては我が国最古、世界でも2番目に古い歴史を持ち、現在は朝日新聞社が発行している。
 日本が所蔵する優れた美術品(日本美術&東洋美術)を木版および写真版によって忠実に再現した複製版画を1〜2点掲載し、日本のみならず欧米諸国に広く紹介した。学術雑誌として世界に高く評価され東洋美術研究には必須の資料であり、海外の大学、博物館、美術館、美術史研究者らが活用している。
 国華創刊当時のヨーロッパは熱狂的な日本ブームで浮世絵等の木版画の需要が高まり一時衰勢していた版元界は勢いを取り戻し200数軒の版元が昼夜を問わず仕事に打ち込み木版画の隆盛期であった。江戸時代から培われてきた木版画の技術は益々進歩し制約の多かった江戸と違って明治政府の援助も受け高価な紙、絵具をふんだんに使用し作られた。特に人気の高かった歌麿、写楽、北斎、広重等の豪華な錦絵が大量に再版され、また月岡芳年、豊原国周、橋本周延、後に水野年方、小原古邨、山本昇雲、月岡耕漁らの新版も出版されその大半が海外に輸出されていた。
 国華に使われた複製版画にはその日本固有の木版色摺が用いられ、またその他、玻璃版(コロタイプ)の技術も一部併用された。特に明治・大正期のものは木版彫師の木村徳太郎、泉信吉、江川金次郎、そして摺師の田村鉄之助、和田藤吉ら神業的な技術を待った職人達の手により絵肌の質感、古色や保存状態までもが緻密に再現され、版木が60、摺り数が100を越すとも言われる気の遠くなるような作業であった。その美しい精巧な木版画は発行部数も少ない(約200〜500部)ため入手困難で、貴重な資料であると同時に貴重な美術品である。木版画史上最高とも言える技術と良質の紙、絵具を使って贅沢な図版として掲載された世界に類を見ない極致、極限の木版画である。

2012年3月 茜画廊


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